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“Japanese Guitar Song Book” (11回連載)

02.「纏う|Matou (Wear it) ~ミュージックビデオ撮影について~」

 丁度2015年の初めくらいだったでしょうか、”Japanese Guitar” のコンセプトも見え始め、アルバムのために『邦楽2.0』を使ったソロギターアレンジを描き始めました。
その頃平行して進めていた、歌という切り口で音楽を創る別プロジェクトの”サイコービジョンズ”では相方の”中村きたろー” と歌を描き始め、1年ほどが過ぎようとしていました。

発された言葉の重みを担ぐことに足踏みしていた自分が歌詞に取り組み、歌う。
これは或る意味一大事なのです。だからこそインスト(歌詞のない音楽)ばかり描いてきたのかもしれません。

ここに『邦楽2.0』という自分でもまだ未知の段階のプロジェクトを黙々と進めていましたので、チャンネルの切り替えに混乱する日々。

ちょうど独立した頃、”卍LINE a.k.a 窪塚洋介”くんに、「独立するとやることめっちゃ増えるけど自由の代償だと思って楽しんで!」ともらったアドバイスが身に沁みます。

そんな中、急遽ミュージックビデオ(MV)を”児玉隆”氏に撮影して頂くことに。

山梨に武田信玄公の菩提寺である”恵林寺”というお寺があり、駄目元で撮影場所の協力をお願いしたところ二つ返事でO.K.が。急なお願いにも関わらず快く快諾して頂き、且つ当日には最大のおもてなしで迎えて下さった恵林寺の皆様には大変感謝しております。この場を借りてお礼申し上げます。

この懐の深さに感動し、僕も同じ様に迎え入れる懐をもつ人間でありたいと感じさせて頂きました。——当分は要修行ですな、、、。

衣装は京都”Mustard”さんの紹介で共感し愛用させて頂いている”Daska” さんに、ヘアメイクは”C+”の”CHIKA”さんに急遽対応して頂きました。いつもながら感謝してもしきれないほどの愛あるご協力に感謝しております。

撮影は恵林寺の門前に敷き詰められた桜の絨毯の上でされました。湖面の煌めきと花の色に酔ってしまいそうな程一面桜色の中で、早朝ギターを弾く。
隆くんの映像はカットを最小限に抑え、音に耳が向かいやすい様配慮された絵の世界に仕上がっています。是非二人の作品を、桜とともに楽しんで頂ければ幸いです。



 そんな「纏う|Matou (Wear it)」の楽曲解説ですが
この曲の最大のトピックは三味線の歌い方(フレージング)の応用でしょうか。
この歌い方とは、三線奏者が’手’と表現している部分のことを指しています。奏者の中にはこの’手’にないフレージングは弾けない方も多くいるようです。
三線や民謡の型に存在する見えない境界線にとても驚かされました。「纏う」に搭載した三味線のフレーズは津軽的な歌い方がベースになっています。
最近では、新たな三味線スタイルを模索し邁進している”月桃三味線 坂田敦”さんと『邦楽2.0』と津軽の未来を創りだす作品イメージもわき上がり、取り組みが始まる予定ですが、彼とも’手’にあるフレージングと無いフレージングの境界線の独特さがしばしば議論に上がりました。弾き手ならではの感覚ですが、そこにその世界観を表現出来ているか否かの機微があるようです。きっと”Japanese Guitar”にもその機微が明確に確立されるタイミングもあるかもしれません。

 この見えない境界線の在り方、曖昧さ、寛容さ、でも明確にある境界感覚が、また日本的な性格を感じさせてくれます。ギターで三味線的歌い方をする邪道さをお許しください。民謡の持つ寛容さに旨を借りて、『邦楽2.0』に実装しております。ここから古典の三味線音楽に興味を抱いて頂けたらこれ幸いです。

 さてこの三味線的フレーズのセクションから、曲はヒップホップ世代以降のロービートなグルーヴに移行します。このパートは4小節目の最後に ”間”の伸びが生じ5小節目にインテンポで返る9小節のループで構成されています。同時にインテンポで10小節ループにも解釈できるように”間”を捉えることで、ビートとの共存を生むように構成しました。この”間”の伸びに採用したフレージングは”流し”という技法です。雅楽や、相撲、歌舞伎など、古典邦楽には色々な局面で登場する日本代表的フレーズと言えるでしょう。だんだんと音数が増え、スピードアップし、目的の拍へ着地する。この技法の塩梅も人間ならではの曖昧さと感覚で成り立っています。因みに’塩梅’とは元々雅楽用語だそうです。他にも雅楽の音楽用語から日常の日本語に採用されている言葉は実は沢山あるんですね。

 このロービートセクションから、また三味線フレージングのセクションに戻り、テンポが加速して、その頂点で曲は飛び散るように終わります。この瞬間に至る辺りは毎度演奏していて、もれなくこちらの意識も飛び散りそうです。思考よりも早く身体が音に反応し動いているような感覚です。

 「纏う」というタイトルはこの三味線的歌い方に現代的なハーモニーが纏うという『邦楽2.0』が提案したい、これまでとこれからの日本の音楽形式のシンプルな融合を表現した楽曲構造から名付けました。曲が纏うイメージは自由に聴きながら膨らまして頂きたいです。出来上がった曲は常に僕の手元を離れ、聴く人のイメージに委ねられ、聴く人の数だけその曲の物語りが生まれます。その自由さが素晴らしい。だから音楽を創るのが好きなのかもしれません。
 
 次回はアルバム3曲目、「六段の調 初段変奏|Rokudan Shodan Variation」について書きたいと思います。こちらは八橋検校さんの作、江戸時代を代表する箏曲、しかも世界初の組曲の言われもある曲でございます。また”Japanese Guitar”に出逢うまでについてもすこし掘り下げて触れたいと思います。



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